音楽学から世界をウォッチするブログ

音楽学を学んでいます。音楽に偏りまくった脳みそ、感性で前のめりに世界の勉強をします!マイブームは建築です!よろしくお願いします!

 

確かに彼女は僕にとって慰藉ではなかった。帯を閉めて会いに行かなければ首尾よく殺されると思っていたし、世界を認識するために必死になって育ててきた僕の言葉を、彼女の言葉がいとも簡単に虐殺することは日常茶飯事だった。よく彼女は車道と歩道を隔てるにも心もとないガードレールに腰をかけては僕を迎え、僕らは一緒にそこへ座って長話ができた。危険と安全のギリギリに身を置く二人は、同時に子供と大人の中間にもあったのだろう。やましい理由も手伝い、僕たちの世界には、誰一人として立ち入れなかった。独断と偏見で互いを愛し、独占し合い、ここが世界の全てなんだと錯覚させるやりとり。そこに、現実をなだれ込ませてしまったのは、僕の方だった。目を、眉を、ちょっとでも動かしたら、それを合図に現実がそこからなだれ込んでしまうかのような緊張状態だったのに、僕の弱さが逃げ道に続くトンネルを掘ったら、あるはずのないもう一つの世界が、勢いよくなだれ込んできてしまった。

『誰かを閉じ込めるならそこが世界の全てだと思わせなきゃいけない。』僕は、うっかりそれを忘れていた。